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東京北簡易裁判所 昭和62年(ハ)23号 判決

原告

石井房藏

石井澄子

右両名訴訟代理人弁護士

有賀功

被告

坂垣チヨ

主文

一  原告らが被告に賃貸している別紙物件目録記載の建物の賃料は、昭和六一年四月一日以降一か月金三万九〇〇〇円であることを確認する。

二  被告は原告らに対し金六六万三〇〇〇円を支払え。

三  原告らのその余の請求を棄却する。

四  訴訟費用は四分し、その一は被告の、その余は原告らの負担とする。

五  この判決は第二項に限り仮に執行することができる。

事実

第一  当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  被告は、原告らに対し、別紙物件目録記載の建物を明渡せ。

2  原告らが被告に賃貸している別紙物件目録記載の建物の賃料は、昭和六一年四月一日以降一か月金三万九〇〇〇円であることを確認する。

3  被告は、原告らに対し、昭和六一年四月一日から別紙物件目録記載の建物明渡ずみまで一か月金三万九〇〇〇円の割合による金員を支払え。

4  訴訟費用は被告の負担とする。

二  請求の趣旨に対する答弁

1  原告らの請求を棄却する。

2  訴訟費用は原告らの負担とする。

第二  当事者の主張

一  請求の原因

1  原告らは、別紙物件目録記載の建物(以下本件建物という。)の実質的所有者(但し、登記簿上は原告らと訴外中川清人、同中川恵佑、同中川公延、同中川かほる、同中川美千子の共有となつているが、共有者間で原告らが所有することが確認されている。)であるが、昭和五五年三月二四日被告に対し、賃貸借期間二か年、賃料一か月三万五〇〇〇円で賃貸した。

2  右賃貸借契約締結並びに解除条件、特約条項を付した経緯は次のとおりである。

(一) 本件建物は、昭和五〇年頃訴外土井に賃貸していたが、昭和五五年三月土井が病気で入院したことから当時土井と同居していた被告から何とか名義を書替えて継続して居住できるようにして欲しいと懇請され、同年三月二四日、名義書替料もとらず、本件建物を賃貸期間二か年、賃料一か月金三万五〇〇〇円で賃貸した。

その際、被告は、本件建物で犬を飼育していたので、これを中止することと、石油ストーブ等の石油器具は転倒し火災の危険がある為、これを使用しないことを右契約の解除条件とした。

(二) ところが、昭和五七年三月二四日の賃貸借契約の更新の時期が来ても被告は犬の飼育の禁止条項を守つていないので再三念を押したうえ、契約書にも石油ストーブの使用禁止と共に、犬猫を本件建物で飼育しないことを特約条項として記載して契約を更新した。

(三) しかし、被告は、原告の再三の注意にも拘らず、依然として本件建物で小型犬二匹を飼育することをやめず、原告らは重度の身体障害者であることもあつて、近隣との紛争をできるだけ避けたいと考えていたので、昭和五九年三月二四日契約更新時も再度前記行為を中止するよう申入れ、更に特約条項として掲記して契約を更新した。

3  ところで、被告は原告らとの特約を無視し、これを遵守しないばかりか、後記(二)記載の昭和六一年三月一日なした原告らの合理的賃料増額の請求にも応じないので、原告らは同年六月犬の飼育の中止と本件建物の賃料の増額を求める調停を東京北簡易裁判所に申立し、昭和六一年(ユ)第五〇号事件として係属した。

なお、それまでの本件建物の賃料の変動の経過は次のとおりである。

(一) 昭和五七年三月に本件建物の賃貸借契約を更新することになつたが、当時本件建物の管理は原告ら以外の共有者がしており、また、原告らと他の共有者との間に相続に関する紛争があつた為、本件建物の賃料を原告らは確認するすべがなく直接被告に確かめたところ、被告は真実の賃料額を秘して虚偽の額を述べた為、昭和五七年四月から同五九年三月までの賃料額が何の理由もなく一か月三万四〇〇〇円と引き下げる結果となつた。それに昭和五五年三月二四日付契約書では更新後の昭和五五年三月からの賃料を一割増額することが合意されていたが、この事実も原告らは知らなかつた。

昭和五九年四月の契約更新時には本件建物の賃料は一か月金三万七五〇〇円に改訂された。

(二) 昭和六一年三月一日の契約更新期に際し、原告らは被告に対し、昭和六一年四月からの賃料については、前記のような賃料変動の経過、最近の地価の高騰、固定資産税の値上げ、更に本件建物の瓦の修理代金三五〇〇円(昭和五六年一二月一〇日分)、建物の修理代金一二万四〇〇〇円(昭和五七年一一月一七日分)、ガス管の修理代金四万円(昭和五九年一月一五日分)等の諸経費等を考慮し一か月金三万九〇〇〇円とする賃料の増額を申入れた。しかるに被告は右申入れに応ぜず賃料を供託し始めた。

4  そして前記調停事件は数回に亙る調停期日に話合いを重ねたが、被告は犬の飼育を中止することに同意しないだけでなく賃料の増額にも応じないので右調停事件は不調となつた。

5  以上のような被告の長期間にわたる契約違反によつて、原告らは我慢の限界を超えただけでなく長期間の室内に於ける犬の飼育によつて畳、建具等の損傷甚だしく、悪臭や犬の泣き聲など受忍できない被害を蒙つていて、原告らと被告間の信頼関係はすでに失われている。

そこで、原告らは被告に対し、昭和六一年一二月六日付内容証明郵便で前記契約違反の事由によつて本件建物の賃貸借契約を解除する旨の意思表示をなし、右書面は同月一三日被告に到達した。

6  よつて、原告らは被告に対し、本件建物賃貸借終了による建物明渡しと昭和六一年三月一日なした賃料増額の意思表示による昭和六一年四月一日から一か月金三万九〇〇〇円の割合による賃料の確認を求め、かつ昭和六一年四月一日から家屋明渡しずみまでの一か月金三万九〇〇〇円(昭和六一年一二月一四日からは同額の割合による賃料相当の建物使用損害金)の支払いを求める。

二  請求の原因に対する認否並びに被告の主張

1  請求原因1の事実は認める。

2  同2の(一)の前段の事実(…賃料一か月金三万五〇〇〇円で賃貸した。…まで)は認める。後段については犬猫等の飼育を禁止すること、石油ストーブ使用禁止が、契約書面上記載されていた事実は認めるが、その余の主張事実は争う。右は、本件建物契約の解除発生の事由となる条件ではなかった。それ故、昭和五六年頃、原告石井澄子は犬を被告が飼育することを容認したし、石油ストーブの使用についても黙認した。

3  同2の(二)の犬飼育禁止と石油ストーブ使用禁止条項は契約書面上記載されていたことは認めるが、その余の事実は争う。口頭による再三の中止、使用禁止の申入れは無かつた。

4  同2の(三)については争う。前記のとおり、犬飼育禁止と石油ストーブ使用禁止条項が書面上記載されていたが中止について強硬申入れの事実は無かつた。

5  同3の冒頭で原告らが主張する賃料増額の意思表示並びに調停の申立があつたことは認めるがその余の事実は争う。

6  同3の(一)のうち昭和五七年四月から同五九年三月までの賃料が一か月金三万四〇〇〇円であつたこと、昭和五五年三月二四日当時賃料を一割増額の合意のあつたこと、昭和五九年四月の契約更新時に一か月の賃料が三万七五〇〇円に賃料改訂された事実は認めるがその余の事実は争う。原告らが実質的所有者になつてから賃借人は被告が一人暮しであることから賃料は値上げもせず書面にも記載しないと言うことであつた。

7  同3の(二)の事実のうち賃料値上げの意思表示のあつた事実、瓦、建物、ガス管の修理の事実(但し瓦、建物の修理代は知らない。)、賃料供託の事実は認める。従前の昭和五九年四月の更新時の賃料の値上げ自体が高額であるのでそれに引続く昭和六一年四月一日以降の賃料について異議があつたので供託したのである。

8  同4の事実は認める。

9  同5の事実のうち、原告ら主張の内容証明郵便が到達したことは認めるが、その余の事実は争う。原告石井澄子からは犬はきれいに飼つていると言われたことがある。

第三  証拠〈省略〉

理由

一請求原因1、同2の(一)の前段の事実、(二)、(三)の犬猫等の飼育禁止と石油ストーブ使用禁止条項が契約書面上記載されていた事実、同3の原告主張の賃料増額の意思表示のあつたこと、調停申立のあつた事実、同3の(一)のうち昭和五七年四月から同五九年三月まで賃料が一か月金三万四〇〇〇円であつた事実、昭和五五年三月二四日賃料と一割増額する合意があつた事実、昭和五九年四月の契約更新時の賃料が一か月金三万七五〇〇円に改訂された事実、同3の(二)の事実のうち、瓦、建物、ガス管の修理の事実、同4の事実、同5の内容証明郵便到達の事実は当事者間に争いがない。

二(本件建物の賃貸借契約成立の経過と争いがある事実について判断)

1  〈証拠〉を総合すると、

(一)  本件建物(東京都北区二丁目五、木造平家建居宅一棟、建坪19.83平方メートル、4.5畳、三畳、台所二畳)と右建物と地続きにある同所二丁目五の弐、木造亜鉛メッキ鋼板葺弐階建、壱階60.75平方メートル、弐階59.13平方メートルは、元訴外森川元順の所有であつたところ、昭和四九年七月三〇日、同人の要請によつて、訴外中川清人、同中川公延、原告石井房藏の共有名義で買受け、その後相続人間で争いがあつて、昭和五四年五月二四日、訴外中川清人、同中川恵佑、同中川公延、同中川かほる、同中川美千子、原告石井房藏、同石井澄子七名の共有となつたが現在は、原告ら両名が本件建物の実質的所有者であることが共有者間で確認されている。森川と中川兄弟とは旧知の関係にあつて、中川兄弟は右物件を資産増額の為に買受け、当初は、中川恵佑が主になつて管理に当たり、本件建物の借家人訴外土井との賃貸借契約は中川恵佑が担当して締結した。土井は、終戦後、昭和二一年一〇月頃旧満洲から引揚げ、昭和二三、四年頃から被告とは内縁関係にあつた。昭和四九年頃土井らは、本件建物を前所有者森川から賃借して入居した。昭和五五年三月土井は、病気で入院し、入院中死去したが、内縁関係にあつた被告の要請によつて被告が借家人の地位を承継し、中川恵佑が貸主側を担当して賃貸借契約を同月二四日に締結した(甲第一号証参照。但し借家人名義は中川澄子となつていることが認められる。)。

以上の事実を認めることができ右事実を左右する証拠はない。

(二)  ところで、昭和五五年三月二四日の当初の本件建物賃貸借契約締結に際し、原告らは、犬の飼育を中止すること、石油ストーブ等を使用しない旨を解除条件としたとし、中川恵佑の供述もこれに沿うが、この段階において、たやすくかく解することはできない。すなわち、被告は土井と前主森川から本件建物を賃借していた時代から常時二匹程度の犬を飼つて来たし、右契約締結にあたつて恵佑自身犬を見たわけでなく、同人も「家を貸す場合家が痛むので一般に条件として入れている。」と供述し、その際の賃貸借契約書(甲第一号証)に徴しても、第七条に『乙は貸室内に於て風紀衛生上、若しくは火災等危険を引起すおそれのあること、又は近隣の迷惑となるべき行為其の他犬猫等の動物を飼育してはならない。』と印刷されており、第十一条の『本件に関し紛争を生じた場合は当事者は関係法規並びに慣習に従い道義的に解決すること。』の印刷された条項の余白に『火災条例に依り石油の使用を禁じます。』とあるものの右契約書全体を通じて借家人として義務的に遵守すべき事項を例文的に規定したもので、被告の借家環境からして共同生活の秩序を乱す行為として一定の動物の飼育が禁止されることのある集団住宅の場合(公団契約書の例)と異なり、原告主張の如く、特殊な条件ないし義務を課したとは到底考えられない。

右事実認定を覆すに足りる証拠はない。右事実認定に反する〈証拠〉は採用しない。

2  〈証拠〉を総合すると、

(一)  昭和五七年三月二四日の賃貸借契約更新期において、中川兄弟の相続関係の紛争が解決し、原告石井澄子と被告とが直接契約書を取交わしたが、被告が依然として犬を飼育しており、中川清人、中川恵佑らの示唆もあり、かつ、本件建物の近隣に住む原告澄子は全聾で、原告房藏は手足が不自由でもあるので、万一火災が発生した場合は、退避困難であることをおもんばかつて犬猫の室内飼育禁止、石油ストーブの使用禁止を特約条項として原告らと被告間で取り決められたことが認められ(甲第二号証参照。右契約書第八条に『本来犬猫室内飼育及びストーブ使用禁止』の記入がされている。)、更に昭和五九年三月二四日の契約更新は中川恵佑が原告らを代理して貸室賃貸借契約書が作成され、第十七条(特約事項)として『犬猫飼育禁止石油ストーブ使用禁止』と掲記された(甲第三号証参照)。その際は、被告は原告ら宅に呼ばれて中川恵佑から特に犬の飼育の禁止について「処分できなければ俺が処分してやる。」と言われた。これに対し、被告は福祉事務所の世話になりながら病院通いしている身で、犬の飼育については森川が家主である時代から長年にわたることで被告の老後の生活にとつて唯一の慰みであることを踏えて直ちに原告側の申入れに応ずるわけには行かず、前記特約のあることを認めながらも消極的抵抗をせざるを得なかつた。その後、原告らより当裁判所に前記のような調停の申立があり折合がつかず右調停は不成立となつた。

以上の事実が認められ右事実を左右する証拠はない。

(二) ところで前記のような特約が、原告らと被告間の本件建物の賃貸借関係において果して合理性を有すると言えるか、借家法六条の立法趣旨に照らしても問題のあるところであるが、過去の契約更新の度毎に貸主側によつてそれが強調され、被告もその特約の存在を認めているから特約は一応有効に成立しているものと解することができる。そうして賃貸人が、特約違反を理由に賃貸借を解除できるのは、賃借人が右特約に実質的違反するような行為をなし、そのため賃貸借契約関係の基礎となる賃貸人、賃借人間の信頼関係が破壊されるに至つたときに限ると解するのが相当である(最高裁判所昭和五〇年二月二〇日判決、民集二九巻二号九九頁参照)。その為には被告が本件建物内で犬を飼育し、石油ストーブを使用していることは当事者に争いがないから右行為自体は特約条項に形式的に抵触することは明らかであるが、更に被告の右一連の行為の態様からして実質的に見て借家の経済的価値を損うような不衛生的害悪、火災等の危険を引起すおそれ、又は近隣の居住者に迷惑となる反社会的行為があつたか否かが究明されねばならない。

〈証拠〉を総合すれば、被告は昭和四九年頃、被告と内縁関係にあつた土井が当時の家主森川から本件建物を賃借して入居した時代から、昭和五五年三月二四日被告自身が借家人になつてからも引続いて今日まで常時二匹前後の犬を室内で飼育して来た。犬の種類はペキニーズという体長三〇ないし四〇センチ、体重五ないし六キログラムの愛玩用のいわゆる座敷犬で、座敷に犬の小屋があり、風呂には月一回入れておることが認められ、食事、排泄物の処理についても訓練が行届いていることが推認され、犬の飼育によつて本件建物内の柱や畳等が汚れたり損傷した事実は認められず、又、右犬は外部とは没交渉に近いから、本件建物の周辺に野良犬が住みついて犬の排泄物などのため不衛生になつているとか、そのため近隣居住者に不快の念を抱かしている等を裏付ける証拠はない。

被告と土井との間には子供はなく、犬は家族同様に二人の生活の中に溶け込んでいたことが推認され、ひとり身となつた被告にとつては二匹の犬は話相手ともいえる唯一の慰みとして特殊な感情をもつていることが認められる。六年前位までは、犬に子犬を産ませて収入の足しにしたこともあつたが、現在いる二匹は九年位前から飼育していて、人間の年令でいえば五、六〇才の年齢に相当し、受胎能力がないので被告は自己も病身であることを考えて、現在の犬をもつて犬の飼育は打ち止めとする考えである。

以上の各事実が認められ、右事実を覆すに足りる証拠はない。

次に長期間にわたる室内での犬の飼育によつて原告らは、悪臭や犬のなきごえで受忍できない被害を蒙つていると主張するが、犬のなき聲の被害についてはこれを認めるに足りる証拠はなく、臭いについては前記認定の犬の飼育状態に照らし受忍し得るものであるといえる。

また、被告の石油ストーブの使用について、火災等の危険を引起すおそれのある問題となる行為についてこれを認めるに足りる証拠はない。

3  以上の各事実認定を総合して被告は特約上の義務違反として借家人として遵守すべき信義則上の義務違反はなく、信頼関係が破壊されるに到つたと認めることはできない。右各事実認定に反する〈証拠〉は採用しない。

4  更に進んで原告らの本件建物賃料増額請求の当否について判断する。

被告が本件建物を賃貸した昭和五五年四月二四日の賃料は三万五〇〇〇円(甲第一号証参照)、その後の二回の更新毎に値上げされ、昭和五七年四月一日の賃料は一か月三万四〇〇〇円(甲第二号証参照)、昭和五九年四月一日からの賃料は一か月三万七五〇〇円(甲第三号証参照)となつたことについては当事者間に争いがない。昭和五七年四月一日からの賃料が一か月一〇〇〇円減額されたことについては、原・被告それぞれ見解を異にしているが、昭和五七年四月一日からの三万七五〇〇円賃料について、被告は高額すぎたと主張するが、右更新時に被告が賃料値上げに異議を述べたことを証する証拠は無く、〈証拠〉によれば、原告は本件建物の瓦の修理代として三五〇〇円を、昭和五六年一二月一〇日に建物の修理代として一二万四三〇〇円を昭和五七年一一月一七日に、また被告が使用するガス管修理代として四万円を昭和五九年一月一五日出費していることが認められ(上記修理の事実については当事者間に争いがない。)、また、甲第一号証(貸室賃貸借契約書)によれば第十二条特約条項中「又弐年に一度家賃の壱割の値上げを乙は承認するものとする(更新の度)。」の記載があり、昭和五七年四月一日から昭和五九年三月三一日に至る経済情勢の変動、地価の高騰、公租公課を考慮しても、昭和五九年四月一日からの一か月金三万七五〇〇円の賃料は合理性があり、被告の主張は当らない。また右認定事実を左右する証拠はない。

そうだとすると、原告らが昭和六一年三月一日なした同年四月分からの一か月金三万九〇〇〇円の賃料値上げ請求は、二年間で値上げ額は金一五〇〇円、その年上げ率0.04パーセントであり、弁論の全趣旨前記認定事実に照らしても、公平かつ合理的である。右事実認定に反する被告の主張は失当たるを免れない。

三結論

よつて、原告らの本訴請求のうち本件建物の賃料が昭和六一年四月一日以降一か月金三万九〇〇〇円であることの確認を求める部分は正当であるから認容し、賃料の支払については、昭和六一年四月一日分以降本件口頭弁論終結(昭和六二年八月三一日)当時までに既に弁済期の到来した分一七月分、金六六万三〇〇〇円を限度に支払いを命ずることとし(原告らは、昭和六一年一二月一日からは不法占有による損害賠償金として請求しているところ、その請求する賃貸借契約解除による本件建物明渡請求が失当であることは既に詳述した通りである。しかしながら、原告らの右損害賠償請求が理由がない場合にはこれを賃料請求として維持するのが相当であると解する。)、その余の請求はいずれも失当であるからこれを棄却すべきものとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八九条および第九二条を、仮執行の宣言につき同法第一九六条一項をそれぞれ適用して主文のとおり判決する。

(裁判官永井茂二)

別紙物件目録〈省略〉

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